開発ストーリー

”京三電機オリジナルブランド製品” を一貫して開発・設計 地球温暖化防止に貢献し、燃料ガス放出ゼロに向け終わりなき挑戦

京三電機は、燃料タンクに設置する”過給油防止統合バルブ”を自社ブランドとして開発・設計し、今後さらに販路が拡大することが期待されています。今回は、開発にあたったメンバーに、その開発の軌跡と今後の未来を聞きました。

カーメーカーからの要望からスタート

・・・まずは、今回 ”過給油防止統合バルブ” の製品の概要と、開発に至った経緯からお願いします。

Nさん 我々の部署は、燃料タンク周辺製品の開発および設計にあたっています。本製品は北米向けで、カーメーカーから、”燃料タンクに給油する際、想定以上に給油してしまうことがあるため、それを防止する部品をつくって欲しい” という要望があり、今回それにこたえる形で開発に至りました。
燃料を過剰に給油すると、燃料蒸発ガスが給油口から放出します。アメリカでは、この燃料ガス放出を法律に基づいて厳しく規制しています。そのため、規制に対応するためのバルブ、及びキャニスタ(燃料蒸発ガス排出防止装置)を装備しています。給油時にガソリンタンクから放出される燃料蒸発ガスを、活性炭で吸着するキャニスタに流し、燃料蒸発ガスの放出を防ぐのです。

Aさん 給油時にオートストップでガソリン満タンが規制されますが、オートストップ後の追加給油が問題となっています。

Yさん オリジナル製品は、燃料タンクの上面に設置し過剰な給油を抑制すると同時に、満タンになったことを感知するバルブです。アメリカでの法規制に対応するための製品です。

”京三オリジナルブランド製品” で大きな達成感

・・・この製品は、親会社のデンソーブランドではなく、文字通り ”京三オリジナルブランド製品" で、カーメーカーに直接納入したことは大きな意味を持つと思います。

Aさん 京三電機の生産品は、デンソーブランドで納入することが多いのですが、本製品は ”京三オリジナルブランド" で直接カーメーカーと取引しているため、京三電機のモチベーションにとっても、大変重要な製品です。本製品を納入した自動車が北米の道を走ることは、開発者冥利につきます。
京三オリジナルブランド製品は、京三電機単独の技術であることから、設計から製造、品質保証まで一貫して行わなければならず、その重要性、責任をもって開発しました。万が一の話ですが、仮に製品に不具合が生じますと、責任は京三電機にありますので、製品開発にあたっては万全を期し、開発中は日々 "これは大丈夫か、あれは問題ないか" などの打合わせをし、自分の中でも十分に考え、製品を完成させました。直接カーメーカーと打ち合わせや交渉をする機会は、京三電機にとって大きなチャンスでした。

Yさん 今回はデンソーが入らず、直接、カーメーカーと打ち合わせをすることでカーメーカーの要望事項などが明確になりました。打ち合わせも緊迫感があり、開発者としては大きなやりがいにもつながりました。

環境規制が厳しくなった今、市場は北米から世界へ

・・・この製品は現在、北米市場のみ納入されていますが、環境基準も規制も厳しくなりますので、日本をはじめとする各国への導入も考えられますね。

Nさん 最近は、環境法規が厳しくなってきましたことに加えて、燃費をいかに向上させるかという競争をカーメーカー間で行っています。そこで引き合いも多いことから、本製品のバージョンアップ版の開発を視野に入れています。特に、地球温暖化防止の世論の高まりを受け、パリ協定が発効されたことにより、さらに環境基準や法規制が厳格化していくでしょう。

Aさん 燃料蒸発ガス放出規制はアメリカだけではなく、じつは、日本も検討に入っています。政府としては、東京オリンピック・パラリンピックまでには法規制を決めたい意向があるようですが、カーメーカーとしてはまだすぐには対応できないのです。しかしながら、今後、各国で法規制自体ますます広がっていくでしょう。たとえば、PM2.5などで中国も環境問題が騒がれていますが、中国政府も本腰を入れ、燃料蒸発ガス放出規制を法律に基づいて規制することにしています。

Yさん この製品に限って言えば、中国もアメリカと同様な法規制となり、同等製品が必須になっています。世界的な市場は広がりつつあります。環境問題規制厳格化を受けて、本製品が北米市場から全世界にわたる大きな市場へと拡大する可能性があります。

設計・開発者冥利に尽きる製品

・・・ご自身で開発された製品が、これだけ拡大されたという思いについて

Aさん 設計者のやりがいは、自分が設計したものが、あの車に搭載されていると胸をはって言えることです。それが、今回実現したということです。

Nさん 欲を言えば、それが目に見えるところであれば最高ですね。

Yさん 縁の下の力持ちの製品なので目に見えないですが、大切な製品であると自負しています。

製品に籠められた設計・開発思想

・・・開発の苦労はいかがですか。

Nさん 開発開始から、量産まで5年かかりましたね。

Yさん 私はカーメーカーに出向し、しっかりと打ち合わせをし、要求仕様を決めることが出来た経験が大きかったです。カーメーカーと京三電機の中間にたって、接着剤のような役割を果たしましたが、業務は大変であった一方、その役割を実行できたことについて満足感があります。

Nさん 本製品は、かつてない部品点数で、急遽仕様の変更もあり、要望にこたえることは確かに大変でした。時間もない中で、自分が開発に携わった中でいちばん苦労した製品ではありますが、同時によくここまでお客様の要望にこたえてきたという達成感は本当に大きいものでした。

Aさん カーメーカーから、一部品を変えるだけでいろんな車種にも対応できるようにして欲しいという要望がありました。大きさも非常にコンパクトですが、我々の設計思想は大きくこの製品に盛り込んでいます。

Yさん カーメーカーが開発した、プラットフォームを基幹とした商品力の飛躍的向上と、原価低減を同時に達成するための車両作りの思想があります。その思想を入れて開発しました。

多くのカーメーカーへの拡販も目指す

Nさん 今回開発の京三オリジナルブランド製品を、他のカーメーカーにも拡販すべく活動しています。本製品が次々と実績を積むことは、たいへん誇らしくある一方、プレッシャーもあります。仕様に応じた確認を常に怠らないようにしています。

Aさん 製品開発にあたり、開発の方向性が変わると、社内審議会でそれを評価する会議を数多く行いました。それだけ作り込まれた製品です。厳しい意見もありましたが、その意見が製品開発の糧になりました。机上で算出して、実際確認して判定するのが開発の王道ですが、机上ではわからない部分を会議で説明することが困難な面もあり、実際の車両でないと判定できないこともありました。そのような問題に対しては、車両の模擬試験を行い、実自動車と模擬試験は同じ結果が出ることを確認し、これらの事象を技術的に解明するのは大変苦労しました。

設計・開発者が一生をかける職場

・・・最後に就活生の皆様に向けてのエールをお願いします。

Aさん・Nさん・Yさん 京三電機は、カーメーカーなどのメーカーと直接、技術開発・モノづくりについての交渉を行うことができる会社です。そして京三電機から逆にカーメーカーに提案もでき、自分たちの開発思想を製品に入れ込むことが可能な職場環境です。京三電機の製品には、私たちの魂がこもっています。その魂をこめた製品は、世界中に通用する自動車になくてはならないものです。自動車部品開発にとって、やりがいのある職場環境です。どうか、就活生で技術者を目指すみなさんにとって、大きなやりがいとチャレンジができる "京三電機" に入社し、我々の仲間として頑張って欲しい、京三電機は設計・開発者が一生をかける職場であることに自信を持っています。